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大阪高等裁判所 昭和24年(ネ)103号 判決

控訴人

小内謙次郞

被控訴人

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す、被控訴人は控訴人に対し、金百十九万九千二百円、及びこれに対する昭和二十三年十月七日から完済に至るまで、年五分の割合による金員を支払わねばならない。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述は、原判決に事実として摘示した所と同一であるから、ここにこれを引用する。

理由

控訴人の本訴請求は、旧憲法の行われていた時期に於ける、官吏の職務上爲した公権力の行使による損害の賠償を求めるものである処、官吏が職務上爲した公権力の行使については、私法上の行爲と異り、民法の不法行爲の規定は適用がなく、又旧憲法下に於ては、他に法令上の根拠がないので、國の賠償責任は認められなかつたのである。尤も新憲法下に於ては、その第十七條に基き、國家賠償法が制定せられて、昭和二十三年十月二十七日から施行せられ、同法第一條第一項により、國又は公共團体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、國又は公共團体が、これを賠償する責に任ずることとなつたが同法附則末項によれば、同法施行前の行爲に基く損害については、なお從前の例によるのであるから、本件控訴人主張の損害については、前段に説示した所によつて、國にはその賠償責任がないと云わねばならない。そうすると控訴人の請求は、その余の判断をまつまでもなく、失当であるから、これを棄却した原判決は相当であつて、控訴は理由がない。

そこで民訴第三八四條、第九五條、第八九條を適用して、主文のとおり判決する。

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